事業概要

ストレス応答制御に基づく次世代型健康寿命科学の研究拠点形成

ストレス社会に生きる現代人において、いかにストレスを軽減し上手く適応するかが、健康を維持し充実した生活を持続させるために大きな課題となっている。個体レベルのみならず、細胞や臓器も同様に、絶えずさまざまなストレスに曝されており、慢性的な過度のストレスは本来生体が持ち合わせているストレス応答機構を破綻し、健康寿命を脅かす疾患群を発症させ、その進展を加速させる。例えば、欧米型の食事形態では偏った必要以上の栄養素の摂取となり、生体内では内分泌組織を含めた代謝臓器が、初期過程にはこの代謝ストレスに応答し適応しようとするが、ストレスが解消されずに慢性化すると過度の異常な応答が誘導され、代謝臓器以外の免疫系や神経系にも重大な影響を与え、結果として過剰な免疫応答の誘導や摂食行動異常に繋がることが知られている。このように本来生体の生命機能を維持するために存在するシステムが、許容量を超えた慢性的なストレスに異常に応答することで、逆に健康を脅かす疾患群の発症を引き起こす自己攻撃性を持った病態誘導型ストレス応答システムへ変換すると考えられる。ストレスによって細胞・臓器・個体の固有のストレス応答機構が、どの程度の強度により、どのように破綻し、病態誘導型のストレス応答機構を稼働させるのかが理解されれば、がん、アレルギーや糖尿病などに代表される生活習慣病、また睡眠障害、うつ病などの神経・精神疾患の診断・治療法の開発に大いに貢献できるにもかかわらず、未だその分子メカニズムは十分に解明されたとは言えない。本事業では、環境や食など常に我々が曝され続けるさまざまなストレスに対する細胞・臓器の特異的なストレス応答システムの分子基盤と、その破綻により発症・進展する疾患群の解明を行い、健康寿命を実現するための研究拠点を構築することを目的とする。具体的には、栄養過不足、アレルゲン、運動、感染、放射線や紫外線などの環境因子、心理・社会的ストレスなどによるさまざまなストレスを対象に、個体レベルでのストレス応答システムを、与えるストレスの強弱とタイミングを解析軸に加えながら分子レベルで解明し、健康寿命を脅かすがん、生活習慣病や神経・精神疾患の診断・治療法の開発のための研究拠点を築いていく。

研究代表者 柴田 重信