炎症・アレルギー疾患研究班

 ライフスタイルの変化によって生じる環境ストレスに着眼して、組織または細胞における炎症プロセスの制御機構を解明することで、新規診断技術・治療法を開発していく。メタボリックシンドローム関連の疾患モデルマウスや老化マウスを用いて、ストレス・運動負荷・トレーニング実験を行い、炎症、酸化ストレス指標を測定し、健常マウスや患者、高齢者のデータとの比較検討を行っている。さらに、ストレスで変動する分子やストレス関連物質で誘導される分子について、メタボローム解析やプロテオーム解析によりバイオマーカーの候補を網羅的に検索している。また、肥満における脂肪組織での免疫担当細胞の活性化は、慢性炎症を誘導し2型糖尿病発症機序のひとつとなっている。そこで、脂肪組織に存在する免疫担当細胞の中で、とくに肥満細胞に着目し、脂肪細胞の分化や成熟における肥満細胞由来の生理活性物質の役割を検証し、脂肪組織における炎症や血管新生などにおける肥満細胞の役割解明に取り組んでいる。一方、難治性慢性アレルギー疾患あるアトピー性皮膚炎の治療効果向上のためには、サーカディアンリズムとの関連性を解析することは、治療上極めて重要である。そこで、アトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスを利用し、主症状である痒み行動にサーカディアンリズムが存在するかどうかについても解析している。また、栄養過不足、アレルゲン曝露、感染、DNA傷害(放射線、紫外線)などを含む外部ストレスは、慢性炎症を介して発癌に関与する可能性が高く、特に消化管においては慢性炎症が発癌の母地となっている。そこで、消化管細胞が外部環境ストレスによって受ける影響を、細胞回転やエピゲノムの観点から解析することにより、生活習慣病や難治性疾患の病態形成機構および慢性炎症に伴う発癌メカニズムの解明に取り組んでいる。また、様々な難治性の慢性炎症性疾患の病態形成を、腸内常在細菌-粘膜免疫系との相互作用の観点から解析することも試みている。栄養過不足などの外部ストレスの強弱およびタイミングを解析軸に、消化管の各部位における腸内エコシステム解析・腸管RNA発現動態・腸上皮バリア機能評価・免疫細胞のポピュレーション解析を行っている。また、正常フローラの移植やプロバイオティクス投与に関する疾患感受性の低減や治療効果についても検証していく。

炎症・アレルギー疾患研究班