精神・神経疾患研究班

 神経系は、生物が環境に適応するために進化し、内分泌系とともにホメオスタシスの維持に重要な働きをしている。外界からのストレスに対して神経系がどのように応答し、ストレスへの応答障害がどのように精神・神経疾患と関連するかを解明し、治療法の開発に結び付ける必要がある。ストレス応答として上昇するホルモンやケミカルメディエ―に対して神経系がどのように応答するか、その応答の不適応がどう精神疾患などに結び付くかなど他臓器との関連も含めて統合的アプローチを行なう。こうした課題を実現するため、マウス、ゼブラフィッシュ、イモリなどのモデル生物を個体として対象とするとともに、ストレス応答遺伝子の発現変化の解析や、細胞レベルでの詳細な検討なども行う。炎症メディエーターについては、中枢神経細胞の興奮性、入力出力特性における制御機構の解明を通じて中枢神経系のストレス応答評価系の確立を試みる。また、オートファジーを制御する物質を簡便にスクリーニングする方法を構築する。個体レベルでのアプローチにおいては、理化学研究所脳科学総合研究センターとの有機的な連携に基づいた研究を同時に推進する。こうしたモデル生物を対象としたアプローチに留まらず、ヒトを対象として精神的ストレスによる心血管疾患の発症および進展機構に関して、各種の交感神経・副交感神経神経活動度評価行い、不整脈、高血圧に対する心理社会的ストレスの臨床的意義を解明する。さらに、ユニークなアプローチとして、ロボティクスの概念を導入して新たなモデル動物のストレス応答の評価系を構築することを目指す。具体的には、げっ歯類などにストレスを与える小型移動ロボットの開発を行なう。同時にロボットに着脱可能な、視覚、聴覚、触覚への刺激を提示するモジュールを開発する。開発したロボットを用いてラットやマウスにストレスを暴露し、その際の反応から各個体のストレスへの応答性を行動レベルで評価する実験系の構築を試みる。こうした統合的な研究を通じて、精神・神経疾患に及ぼす影響を統合的に理解することで、新しいストレス応答診断法と新規精神・神経疾患の治療戦略を確立することを目標とする。

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