研究者

井上 貴文

早稲田大学 理工学術院 教授

末梢組織から発する炎症・ストレスメディエーターは中枢神経系において神経細胞に直接作用し、精神的、神経学的影響として顕在化することがわかっているが、それぞれのメディエーターが中枢神経細胞に影響を及ぼしているかの詳細な情報はいまだ得られていない。本研究はこの点を電気生理学的アプローチにより明らかにすることを目的とする。炎症・ストレスメディエーターを神経細胞に作用させた時に神経細胞の基本的性質すなわち細胞膜の興奮性、イオンチャネルの特性の変化等を詳細に検討する。脳の情報の中継センターである視床のリレー神経細胞は単なる末梢と大脳皮質との機械的リレーではなく様々な情報を状況にあわせて適切にフィルターしている。これが破綻すると幻視・幻聴などの幻覚や譫妄状態となって現れる可能性が指摘されており、心的あるいは肉体的外傷や重篤な疾患による強度のストレスにより産生される炎症・ストレスメディエーターにより生じる可能性が考えられている。本研究ではマウス脳から視床を含む脳切片標本を作成し、単一リレー神経細胞からパッチクランプ記録を行い、種々の炎症・ストレスメディエーターを作用させてリレー細胞の膜特性を詳細に検討することを目的としている。

井上 貴文