研究者

松田 浩珍

東京農工大学大学院農学研究院 教授

アレルギー疾患の病態解明と根治療法開発

食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症などアレルギー疾患は、アレルギー体質の獲得によってその発症頻度はさらに高くなり、根治療法の決め手のないまま社会問題化している。即ち、生活環境と生活習慣の劇的な変化に、ヒトの進化が追いつかず、本来生体防御上極めて重要な役割を果たしている免疫システムが、自己への攻撃とも言うべきアレルギー反応を引き起こしてしまっているのである(衛生学説)。特に、先進国では深刻であり、遺伝的素因も相まって症状は複雑化、重症化し、単純な対症療法だけでは制御も儘ならないケースも増えて来ている。これを打開するには病態解明を目的とする基礎研究が必須であり、その解明こそが根治療法開発に繋がるのである。その意味で、疾患モデル動物は極めて有用な情報を与えてくれる。我々研究グループは、アトピー性皮膚炎の自然発症モデルの開発に世界に先駆け成功し、これを基本素材として、本疾患の病態発現の分子メカニズム解明を進めており、多くの新知見を得ている。特に、皮膚バリアの恒常性に関しては、繊細な環境によって維持されており、その破綻による影響は、アトピー性皮膚炎の発症の重要な発病要素となっているが、本疾患モデルの利用により破綻と再生の分子メカニズムが徐々に解明されつつある。

松田 浩珍