研究者

大島 登志男

早稲田大学 理工学術院 教授

「ストレス応答に対する神経系応答の機序解明と応用」

細胞のストレスに対する反応としてER-ストレス応答が知られている。例えば、細胞内にタンパク質のfoldingに異常が起きて、凝集体を生ずることがあり、このfoldingに異常を来す原因たんぱく質をmisfold proteinと呼ぶ。CAGの繰り返しが伸長することでpoly-Qを含んだタンパク質がこれに該当する。misfold proteinの産生が原因となりトリプルリピート(またはpolyQ)病と呼ばれる一連の神経変性疾患においては、misfoldを改善するためのER-ストレス応答が起きるが、misfoldの改善が行われないと、神経細胞死が起きることで、病態の進行が起きると考えられている。こうした神経細胞内へのmisfold proteinの蓄積が原因となる神経変性疾患においては、その病態の解明に基づく治療戦略の検討が必要となる。そのため、本研究ではER-ストレスをモニタリングするシステムを構築し、それを応用して神経変性疾患などの病態の解明と治療法の開発を目指す。

ER-ストレス応答で起きる様々な反応のうち、ER-ストレスから細胞死に至る経路で注目されているCHOPというタンパク質がある。非ストレス下では、タンパク質コード領域の5’-UTR依存的にCHOPタンパク質産生は抑制されており、ER-ストレスによりこの抑制が解除され、CHOPタンパク質量の増加が観察される。この系を用いて、CHOP 5’-UTR下で蛍光タンパク質やルシフェラーゼを発現することによりER-ストレスをモニタリングすることが可能となる。本研究では、ER-ストレスのモニタリング系を神経変性疾患モデルに応用し、ER-ストレスと神経細胞死の関連を明らかにする。さらに、こうした知見に基づいてER-ストレスを軽減する薬剤のスクリーニングを行ない、新たな治療戦略の開発する。

大島 登志男