研究者

田中 剛

東京農工大学大学院工学研究院 准教授

近年、細胞集団に含まれる個々の細胞を単一細胞レベルで網羅的に解析することで、細胞間情報・組織間情報など、より階層の高いレベルで生命現象を理解することを目指す単一細胞解析が行われるようになった。細胞集団を一つのコミュニティとして捉え、そのダイナミクスを解析する上では、個々の細胞の分化・増殖などを多点同時記録し、長期モニタリングできるシステムが必須である。このような単一細胞解析システムの実現に向け、細胞マイクロアレイシステムを用いた細胞集団のリアルタイム動態解析法の開発に取り組んでいる。本研究では、細胞コミュニティ中に存在する個々の細胞の分化・増殖などの状態遷移を数万細胞レベルで同時並列に位置情報とともに取得する“細胞マイクロアレイシステム”を構築し、分化・増殖に関わる諸因子を特定することを目的としている。これまでに、本マイクロアレイシステムを用いて単一細胞を迅速・高効率に集積化する基本技術を確立しており、数万個の細胞中からがん細胞や免疫細胞などを特異的に検出できることを実証している。さらに、アレイ化した単一細胞の増殖や分化を連続的に追跡することで、単一細胞から派生した細胞集団の構成・状態遷移を追跡することが出来る。本システムの利用により、がん細胞、繊維芽細胞、免疫細胞などの多様な細胞の集団で構成されたコミュニティの動態を単一細胞レベルで評価することができ、発がんのような高次現象の解明に貢献できると考えられる。

田中 剛